- 超自然現象 -

 
私は霊感とか第六感というものに無縁なタイプの人間である。
お化けとかUFOを見たこともないし、身近な人の最期に「虫の知らせ」的な気配を感じたこともない。もっとも、お化けは怖いので見えなくて結構、霊感などなくて結構、と思っているのだけれど。

昔テレビ番組でかの有名な超能力者ユリ・ゲラーが、
「テレビの前の皆さん、スプーンを持って念じてください。」
と「念」を送ってくれたことがあった。
姉とふたりそろってスプーンをなでてみたところ、姉のスプーンはかなり曲がったのだけど、私のスプーンは平らなままだった。
本当は、彼女は腕力で曲げたのではないかと私はいまだに疑っている。
だって姉はバカ力の持ち主で、通ってた女子高では一番握力が強かったのだから。
ま、それはおいといて…

そういうものに縁のない私だけれど、霊魂とか超能力とかはきっと存在するのだと思う。
科学で説明できないからといってそんなものはすべて嘘だと言い切る人がいるけど、了見が狭いと思う。説明出来ないものはすべて嘘だとか常識以外のものは信じないと誰もが思っていたら、人類の長い歴史の中で今日までの数々の大発見はありえなかったではないか。
またユリ・ゲラーの話に戻るが、テレビの番組に彼が出たときに、「超能力否定派」の芸能人数名が彼に向かって頭ごなしに嘘つきよばわりして、しまいに彼は怒って帰ってしまったのだけど、あれは見ていて大変気分が悪かった。

しかし。
厳密に言うと、ほんの少しだけど私にも不思議な体験がある。
ここで読んでいる方に過度な期待を持たれると困るので、今から言っておきますが、本当につまらないことなのですからね。(汗)

小学生のとき越境通学をしていた私は、ランドセルをしょって地下鉄で一時間近くかけて学校に通っていた。
学校帰りに乗るその電車は、混んでいるというほどではないが、たいてい座れなかった。
子供でも、長い時間ずっと立っているのは疲れるもので、出来れば席に座りたい。
だから、乗るときから「早く降りそうな人」の前に立つことにした。
ではどうやって早く降りそうな人を見つけたかというと…
実際に座っている人たちの容姿や服装などで判断するのではなかった。
電車がホームに入ってくる。停車位置につく。そして、ドアが開く瞬間―――
私は目をつぶったまま「早く降りそうな人」を探すのだ。
ある場所が光る。
そして、目を開け電車に乗り、その場所に座っている人の前に立つ。
すると…その人は必ずひとつかふたつ先の駅で降りるのだった。
はずれたことがなかったわけではないし、何回乗って何回当たったか統計をとったわけではない。しかも、そういうことをしていた期間はせいぜい一年か二年の短い間なので、単なる偶然かあるいはそれ以前に「子供の思い込み」であったのかもしれない。
だから、誰にも話さずにいたのだけれど。

次に、夢である。
ほんの2回だけだけど、予知夢のようなものを見た。
最初に見た夢の内容は…・

会社でAという営業職員さんからある仕事を頼まれる。保険契約の試算なのだけれど100件やってくれという。その試算依頼は日常的なものだったけど、一度に100件もというのはかなり多い量である。
(ええー勘弁してよ)
引きうけながら、私は心の中でそう思っている。

すると翌日それが現実になった。
びっくりしたけれど、たまたま偶然だと思った。何故なら、会社でやっている仕事なので、普段から意識の中にあり、「ちょっとめずらしいけど、実際に起こり得る出来事」だからだ。

しかし。
2回目のときはもっと驚いた。
数年前に自殺した芸能人がいたのだけれど、私はその人が自殺する夢を前日に見ていたのである。
とりたてて彼のファンであったわけでもないし、その前に彼が出ているテレビを見たわけでもなかった。
だから…そのときはとても不思議な気分だった。

予知夢はそれだけである。
超能力などには関係ないけれど、その他にも奇妙な夢を見ることがある。
夢というより…実際には、「ねしな」に見るのである。つまり、「まだ完全に寝ていなく、意識も半分ある」状態のときに、まぶたの裏に出てくる映像である。

それは、人の顔、顔、顔…・顔の連続なのである。
テレビ画面を見ているように、すごい早さで顔が入れ替わる。
その顔は老若男女混ざっているのだが、誰一人私の知り合いではない。全員が全く知らない人なのである。
それなのに、ひとりひとりの顔が、強烈なまでに鮮明でリアルなのである。
テレビのコマーシャルなどでよく見るような…・「カシャッ、カシャッ」というシャッターの音と共に映像が変わるような、まさしくそういうかんじで、さらにそれがえんえんと続くのである。

この不思議な夢(というか映像)はある時期に何度か見たけれど、最近は見ていない。
私はふと考えた。
この知らない人たちに何か共通点があるのだろうか。私に何か関係があるのだろうか。
うーん。
なにせ見覚えのない人たちばかりなのだ。

祖先?
前世の姿?
(ちなみに男性も女性もいたけれど、みんなアジア人の顔だった。)

知る由もない。
いや、ただの夢なのだろう…

心霊現象とか、超能力とか、宇宙人の存在とか、そういうものが科学で解明される日がやがて来るのだろうか。いや、そう簡単には全容が解明できないだろうけれど、とっかかりだけでもつかめたらおもしろいのに。
あと何十年生きるのかわからないけど、願わくば生きているうちに少しでも知りたいと思う。
多分、だめでしょうけどね。


 2002年9月

 
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