- OLのひとりごと -

 
女性。
独身。
35歳プラスアルファー。

と、ここまでの要素を提示すると、たいていの人は言う。
「まあ〜、キャリアウーマンね!」
「いいえ、全然。」
と、笑いながら受け流すけれど。

わかっている。言うほうだって、そうとしか言いようがないのだ。
だって、その歳になっても独身じゃあ、そう言うしかないのだろう。おっと、ひがみモードが早速顔を出してしまった…・もとい。

テレビドラマや、小説の主人公になる活躍する女性たち。
年収は男性顔負けで、パリッと着こなした仕立てのいいスーツ。
ドラマでそうした女性をひがんで足をひっぱるのは、たいてい年増の一般職の女性だったりして。
なおかつ、デキル女がお茶くみをしないのをひがんで、決まっていやがらせをする。

そんな私は、お茶くみもすればコピーもとる、ごくフツーのOLである。
OLという言葉が時代錯誤だとか言われるけれど、じゃあなんていえばいいのかしら。
働く女性?
一般職事務員?
別に呼び方なんかどうでもいいのに。
少なくとも、私のようなフツーの事務職にとっては。
そういうわけで、私は少し疲れている。

ふう。

世の中のメディアは、ある程度年齢のいった独身女性はキャリアを積んでいて当たり前、とあまりにも決め付けていないだろうか。あるいは、そういった幻想を世間に与えているような気がしてならない。
でも、実際には、肩書きなど何もない人もいる。
いや、そういう人が大多数だと思うのだけれど。
そういう人たちが負け組というならば、私は負け組みで結構。

主婦はいいなと思う。
主婦業の片手間に仕事してるといえば、それが立派な仕事じゃなくたって誰も責めないもの。しかし、独身で「立派でない」私のような女性は本当に肩身が狭い。
でも。
地味な仕事を毎日やり、ささやかに暮らしている人生があったっていいじゃないですか。
その人が適齢期を過ぎていてトウが立っていたっていいじゃないですか。

仕事には向き不向きがある。
それを決める要素は、
1、 好きか嫌いか。
2、 能力があるかどうか。(適性の問題も含めて。)

私は事務仕事が嫌いじゃあないけど、能力があるかどうかというと、かなりやばいと思う。頭脳明晰で、自らアグレッシブに勉強しては新しい分野を切り開いていくタイプともほど遠い。だから、フツーに地味に、ずっと同じことをしてお給料をもらっている。だいたい、上の1と2の項目について自分がどのくらいのものかなんて、新卒で入社して3年もすれば誰だってわかるのだ。

上司は年に一度の面接でいつも私に聞く。
「君に夢はないのか?」
少なくとも今の会社で夢はない。
転職するつもりもない。
仕事以外で夢があったとしても、あんたなんかに教えてあげない。

世間はうるさい。
会社はうるさい。
夢を持て。
夢に向かって突き進め。
何かが達成出来たら、次の目標を探せ。

もういいかげんにして。
ただ黙って地味な仕事をしているだけじゃだめ?
どうせもうお給料上がらないのはわかっているから、このままいちゃだめ?

最近ではよく耳にする言葉。
「がんばらなくていいんだよ」
よく使われるのは、障害者とか、介護してる人とか、心が病気の人とかに対してだけど、私みたいな普通のさえないOLも、どうかそっとしといてもらえないだろうか。
人に迷惑をかけないで、人生にささやかな楽しみを持って、それでいて一般職の仕事を地味にやり続けていいのだと、どうか、誰か言ってもらえませんか?


2003年10月

 
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