- クリスマスの正しい過ごし方 -

 
これもひとつの日本の風物詩。
一体いつからこうなったのか。
クリスマスイブは誰もが恋人と過ごさないといけないなんて。

クリスマスイブの正しい過ごし方を下記にまとめてみましょう。

1. ステキなレストランでディナー。ただしあくまでもこれは雰囲気の良い、イタリアンとかフレンチなどの『レストラン』でないといけない。飲み物はグラスワインを1杯ずつなどとケチってはいけない。当然ボトルで注文する。いくら値段が高い店でも、ふぐとかしゃぶしゃぶではいけない。ましてやヤキトリ屋などもってのほかだ。

2. クリスマスプレゼントの交換も重要なイベントの一部。これも、当然おしゃれなものでないといけない。出来ればブランド物の小物。男性から女性へは、宝石とか時計などといった高価なアクセサリーが望ましい。

3. そしてゴージャスな食事のあとは、高級ホテルに泊まるのが定番。当然あらかじめ予約をしておかなくてはいけない。

では、ドツボにはまったカップルの例をご紹介しましょう。
イブの夕べに、ラブラブ気分でドライブがてら横浜へと向かったA子と彼氏。
夕暮れ迫る山下公園に着いたのはいいけど、駐車場はどこも満車で、停める場所などありゃしない。
仕方がないから中心地からかなりはずれた場所にやっとこさっとこ停めて港の方まで戻ってみると ―――――――― 
なんと、山下公園はカップルだらけ。それも満員電車並み…・!!隣のカップルとくっつくくらい接近してるというのに、それぞれのカップルが二人の世界で見つめ合っているではないか!!
すっかり気分がしらけたふたりは、あてもなく歩いて食事の場所を探したけれど…
雰囲気のよさそうなレストランはどこも予約でいっぱい。
んもうこれでもか、って歩いてさびれた場所でやっとみつけた場所はなんと…純和風お食事どころ。しかもメニューはクリスマス限定、その名も「クリスマス懐石」2万円なり!
BGMは和食どころらしく琴の音が流れているのだけど、曲目がホワイトクリスマスなもんだから、かえってミスマッチを際立たせるばかり。
石庭を模した店の造りはどこまでも純和風。
床の下には縦横無尽に池がはりめぐらされ、見事な鯉が泳いでいる。
そして通路のように橋がかかり、赤い欄干が。
橋の奥には立ち並ぶ鳥居まである徹底ぶり。
しかし…・
鳥居の脇には巨大なクリスマスツリーがこれでもかと存在感を放っているではないか。
鳥居っていったら神道のシンボルみたいなもんでしょ?
なのに、鳥居とクリスマスツリーが隣り合わせにそこにある不思議。
嗚呼。
それは世にも不思議な光景であった。
やがてBGMがホワイトクリスマスからハイテンポのジングルベルに変わった頃、(依然としてお琴)もうこうなったら開き直るしかない、と日本酒をお銚子のままラッパのみでヤケ酒をあおるA子であった。
恋人にとってのクリスマスはあくまでも西洋的でロマンチックでなくてはいけない。
こんな悪夢のような一日を過ごしたカップルがすぐに別れたのは言うまでもない。
みなさん、気をつけましょう。

若い頃は一大事だったなあ。
「もうすぐクリスマスだから(一緒に過ごす)彼氏を見つけなくちゃ」って彼のいない子はみんな真剣だった。
イベントは大事だし、若い頃は特にまわりが気になるし、だけど、そういうものに踊らされてみじめな気持ちになったり必要以上に落ち込んだりしてた事が、今考えてみると無意味に思える。
イベントに精を出すのがばかばかしいのではなく、彼がいないイコール楽しいイベントに参加する資格すらないって決め付けていたその発想が、若い時間を無駄にしてたのかなあって思ったりして。
まあ、それが若さなんだけどねえ。
若さなんて、苦い思い出だらけ。

しかしそうこうしているうちに。
自宅でトリの足とか食いちぎって、両親と一緒にさんまとかがやってるお笑いクリスマス特番とか見て笑うクリスマスイブを3回も過ごせば、もう人生なんでも来い、てな感じになる。
そんなふうにしてやがては三十路を迎え、女はますます強くなるのだ。

私自身、典型的なクリスマスの過ごし方は…やっぱりステキなレストランでディナーってのが多いでしょうか。
ワインを飲みすぎて、
「女同士でクリスマス過ごしちゃ悪いかよぅ〜ヒック」
とか言ってよろよろと夜の街を歩けば、師走の風が身にしみる。
そうやって、今年もまた少しだけタフになるのだ。

ここ数年は、プライベートでの忘年会やクリスマスの食事会が目白押しで、本当に忙しく年末を過ごしている。
友達をうちに呼んでのホームパーティーやら、気の置けない友人とすてきなレストランではりこんだり、あるいはライブハウスでカクテルグラスを片手にジャズに聞き入ったりね。

相手がいるとかいないとか、そんなの関係ないよね。
クリスチャンじゃなくたって、ニッポンのクリスマスを楽しむ権利はあるのだから、
形にこだわらないで、楽しもうよ。
特に、シングル女性のみなさん。
飲んで騒いで羽目をはずして、ひと寝入りすれば明るい未来が待ってるよ!

おしまいになりましたが、これを読んで下さっている皆さんが、楽しいパーティーシーズンを過ごされて、ちょっと早いけど…・良いお年を迎えられますようお祈りしています。

来年もよろしくねっ!


2003年12月

 
エッセイの、無断転載を禁止します。
すべての著作権は猫河原寿に帰属します。
このページはレンタルサーバ、ドメイン取得のWISNETが企画運営しています。


Copyright © 猫河原寿 All Rights Reserved.